1. はじめに:教育勅語とは何か?
「教育勅語」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
これは明治時代に制定され、日本の学校教育において重要な役割を果たしてきた文書です。
特に道徳教育の基盤として活用されており、親孝行や友情、勤勉といった12の徳目 を説いています。
しかし、戦後の日本では廃止 され、現在は教育現場では使用されていません。
本記事では、教育勅語の 「意味・歴史・問題点」 を詳しく解説し、さらに 「学制との違い」 についても分かりやすく説明します。
2. 教育勅語の基本情報
教育勅語とは?
正式名称は 「教育ニ関スル勅語」 で、1890年(明治23年)10月30日に発布されました。
目的
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日本国民に道徳心を育むこと
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忠君愛国の精神を養うこと
教育勅語は、天皇が国民に向けて示した道徳規範 であり、学校教育の基本理念として使用されました。
教育勅語の制定背景
明治時代、日本は急速な近代化を進めていましたが、西洋文化の影響で 「日本人としての価値観をどう教育するか?」 という問題が浮上していました。
そこで、儒教的な道徳観 を基本に、日本独自の道徳教育を確立するために作られたのが 教育勅語 です。
また、国民が国家のために尽くすことを強調する内容も含まれており、戦時中には 戦争協力の精神 を醸成するための教材として利用されました。
3. 教育勅語の内容と12の徳目
教育勅語には、以下のような道徳的指針が記されています。
教育勅語の12の徳目
徳目 | 意味 |
---|---|
父母ニ孝ニ | 親を敬い、大切にしましょう |
兄弟ニ友ニ | 兄弟姉妹は仲良くしましょう |
夫婦相和シ | 夫婦は互いに助け合いましょう |
朋友相信シ | 友人とは信頼し合いましょう |
恭儉己レヲ持シ | 自分の言動を慎み、謙虚になりましょう |
博愛衆ニ及ホシ | すべての人を広く愛しましょう |
學ヲ修メ業ヲ習ヒ | 学問を学び、職業を身につけましょう |
以テ智能ヲ啓發シ | 知識を磨き、才能を伸ばしましょう |
德器ヲ成就シ | 人間性を高め、人格を磨きましょう |
進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ | 社会のために尽くしましょう |
常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ | 法律やルールを守りましょう |
一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ | 国に危機があれば、天皇と国家のために尽くしましょう |
現代でも通じる価値観
教育勅語の中には、現代においても 道徳教育の基盤 となり得る部分があります。
「親孝行」「友情」「勤勉」などは、時代が変わっても重要な価値観です。
4. 教育勅語の問題点
① 戦前の国家主義と結びついた
教育勅語は 「天皇への忠誠」 を強調している部分があり、戦時中には 戦争協力の精神 を育むために利用されました。
特に問題視されたのが、最後の一文 です。
「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」
これは、戦時中に「天皇のために命を捧げること」を正当化する解釈 に使われました。
② 戦後、日本国憲法と矛盾
戦後、日本国憲法が制定され、個人の自由や基本的人権 が重視されるようになりました。
しかし、教育勅語は 国家と天皇への忠誠 を求める内容が含まれているため、戦後の民主主義教育にはそぐわないと判断され、1948年に廃止されました。
5. 教育勅語と学制との違い
学制とは?
「学制」とは、1872年(明治5年)に制定された日本最初の近代的な学校制度です。
学制の特徴:
✅ 全国に小学校を設置し、義務教育を開始
✅ 初等教育(小学校)から大学までの教育体系を整備
✅ 明治政府が法令として発布した
教育勅語との違い
項目 | 学制 | 教育勅語 |
---|---|---|
制定年 | 1872年 | 1890年 |
発布者 | 明治政府 | 明治天皇(形式上) |
内容 | 教育制度の確立 | 道徳教育の理念 |
法的効力 | 法律として制定 | 勅語(法律ではない) |
目的 | 教育の普及 | 国家道徳の確立 |
簡単に言うと、
「学制は教育の仕組みを定めた法律」 であり、
「教育勅語は道徳教育のための指針」 です。
6. 現代における教育勅語の評価
肯定的な意見
✅ 「親孝行や友情などの道徳的価値観は普遍的」
✅ 「現代の道徳教育に取り入れても良いのでは?」
否定的な意見
❌ 「天皇制と結びついた国家主義的な思想が含まれている」
❌ 「戦時中の利用を考えると、教育現場には不適切」
7. まとめ:教育勅語は道徳の指針として現代に活かせるか?
教育勅語は、戦前の道徳教育の中心 であり、親孝行や友情といった普遍的な価値観を説いています。
しかし、一方で 天皇への忠誠を強調する側面 もあり、戦後の民主主義教育とは相容れない部分があります。
現在では、教育勅語は 歴史的資料 として扱われていますが、一部の道徳的価値観は現代でも参考にできる部分がある というのが多くの意見です。
「過去の歴史を学び、未来に活かす」 ことが、現代における教育勅語の正しい向き合い方と言えるでしょう。