日本は四方を海に囲まれた自然豊かな島国。古来より、魚は人々の暮らしと密接に結びつき、食文化の中心でもありました。「魚を食べると〜♪」の歌でも知られるように、魚は栄養価が高く、健康に良い食材として今なお愛されています。
では、「魚」という言葉は一体どこから来たのかご存知ですか？また、魚の名前にはどのような由来や意味があるのでしょうか？この記事では、「魚」という言葉の語源と、代表的な魚たちの名前の由来を詳しく解説します。魚好きの方も、語源マニアの方も、楽しんで学べる内容です。
【魚の語源】「魚」はどこから来たのか？語源と由来を徹底解説
「魚」の語源は「酒菜（さかな）」が起源
「魚（さかな）」という言葉の語源は、もともと**「酒菜（さかな）」に由来しています。これは、古代日本において「酒のつまみ」を意味する言葉**でした。つまり、「さかな」という言葉は当初、「魚そのもの」を指すものではなく、酒と共に楽しむおかず全般を指していたのです。
魚を多く食べる文化の中で「魚＝さかな」に
江戸時代以降、魚が酒の肴としてよく食べられるようになったことで、「酒菜＝魚」のイメージが強まり、やがて「魚（さかな）」が魚類そのものを指す言葉として定着しました。
古語での「魚」＝「いを」「うを」
日本語の古語では、「魚」のことを「いを」と呼んでいました。この「いを」は時代の流れの中で「うを」へと変化し、現代でも**「トビウオ」「タチウオ」などの魚名にその名残が見られます。ただし、「うを」という発音は母音が連続するため不安定**で、音の変化を経て、現代の「さかな」へと進化しました。
現代の「魚（さかな）」は、語源的には「酒菜→さかな→魚」という流れで形成された言葉です。
【魚の名前の由来】人気魚介類の名前に込められた意味を紹介
魚の名前には、姿形・生態・味・地域性・古語など、さまざまな要素が込められています。ここからは、日本でおなじみの魚たちの名前の由来を、正確な語源と共に紹介します。
■ カンパチ（間八）
- 【由来】：頭部に**漢数字の「八」**に似た模様があることから、「カンパチ」と名付けられました。
- 【備考】：回遊魚で、高級魚としても知られます。
■ カレイ（鰈）
- 【由来】：片側に目が寄っていることから**「かたわれ（片割れ）魚」**と呼ばれ、訛って「カレイ」になったとされます。
- 【備考】：ヒラメとの見分け方は「左ヒラメ、右カレイ」。
■ イカ（烏賊）
- 【由来】：語源には諸説ありますが、「怒（イカ）ると色が変わる」「いかめしい姿」から来ているとも、「行き交う（いきかう）」から転じたとも言われています。
- 【備考】：中国では「烏賊（からすいか）」と表記。海賊に例えられたことによる。
■ アイナメ（鮎並）
- 【由来】：味が鮎に似ているため、「アユナミ」が転じて「アイナメ」に。**「鮎並」**と表記されます。
- 【備考】：刺身・塩焼き・煮付けに好適な白身魚。
■ アンコウ（鮟鱇）
- 【由来】：大きな顎を持つため「アゴウオ」と呼ばれ、それが訛って「アンコウ」に。
- 【備考】：冬の味覚。鍋料理が代表的。
■ サケ（鮭）
- 【由来】：川を「逆（さか）さまに」上ることから、「逆登る＝さかのぼる」→「さけ」に。
- 【備考】：和語と漢語（鮭）は一致しない場合もあり。
■ サメ（鮫）
- 【由来】：**「小さな目」＝小目（さめ）**から転じたとされる。
- 【備考】：「さ」＝小、「め」＝目の合成語。
■ マグロ（鮪）
- 【由来】：肌が黒い「真黒（まぐろ）」または、目が黒い「目黒（めぐろ）」が訛った説あり。
- 【備考】：高級魚で、刺身や寿司の定番。
■ スズキ（鱸）
- 【由来】：身が白く、「すすぎ洗い」したように美しいことから「ススギ」→「スズキ」に。
- 【備考】：高級白身魚。洋食にも利用される。
■ ニシン（鰊）
- 【由来】：体を二つに裂いて加工することから「二身（にしん）」と呼ばれるように。
- 【備考】：ニシン漬けや昆布巻きでおなじみ。
■ タラ（鱈）
- 【由来】：体の斑模様から「まだら」→「タラ」または、白い身で「血が足らない」→「タラ」の説あり。
- 【備考】：冬の鍋料理で人気。
■ サンマ（秋刀魚）
- 【由来】：細長い姿から「狭真魚（さまな）」→「サンマ」に転じた。
- 【備考】：秋の風物詩。「秋刀魚」の漢字は明治以降の創作。
■ サバ（鯖）
- 【由来】：小さい歯が密集することから、「小歯（さば）」→「サバ」に。
- 【備考】：味噌煮やしめ鯖が有名。
■ カツオ（鰹）
- 【由来】：硬い魚「堅魚（かたうお）」→「カツオ」に。加熱すると硬くなる性質から。
- 【備考】：鰹節の原料。たたきも人気。
■ ブリ（鰤）
- 【由来】：脂の多い魚「アブラ」→「ブラ」→「ブリ」に変化した説が有力。
- 【備考】：出世魚。成長により名前が変わる。
■ アジ（鯵）
- 【由来】：味が良い「味」→「アジ」に。
- 【備考】：庶民的な魚。刺身、塩焼きなどで人気。
■ イワシ（鰯）
- 【由来】：弱くてすぐ死ぬ「弱し」→「イワシ」または、賎しい魚＝「いやし」→「イワシ」説あり。
- 【備考】：栄養価が高く、庶民の魚。
■ タイ（鯛）
- 【由来】：平たい魚「平魚（たい）」から。または、貴重で立派な魚「大位（たい）」に由来。
- 【備考】：祝い事の象徴。味も見た目も優秀。
その他の面白い魚の名前の由来
■ ナマズ（鯰）
- 【由来】：仏教の念仏「南無阿弥陀仏（なむあみだぶつ）」の「ナマンダブ」→「ナマズ」説あり。
- 【備考】：地震と結びつく伝承あり。
■ ウナギ（鰻）
- 【由来】：白い腹部が黄色く「胸黄（むねき）」→「むねぎ」→「うなぎ」に。
- 【備考】：夏のスタミナ食の代表格。
まとめ｜魚の語源と名前の由来を知れば、魚がもっと好きになる！
魚の名前には、それぞれに深い歴史や文化的背景があり、その由来を知ることで、魚への理解がさらに深まります。「さかな」という言葉一つにも、日本人の食文化や言語の進化が詰まっているのです。
魚は単なる食材ではなく、日本人の生活と文化を映し出す鏡。魚の語源や名前の由来を知れば、次に魚を食べるときにちょっとした感動が生まれるはずです。
参考資料・出典
- 『日本国語大辞典』小学館
- 『言語学から見た日本語の語源』NHK出版
- 日本水産資源センター公式サイト